「第51回 放射線環境・安全に関する研究会」印象記
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「大気中ラドン及び壊変核種の動態」という演題で名古屋大学大学院工学研究科総合エネルギー工学専攻 山澤弘実 教授による講演が 2024 年1月24日ナディアパーク
デザインセンタービルの名古屋市市民活動推進センター集会室で行われた。
最初にラドンの地面からの発生機構について解説があり、保健物理の分野では被ばくに着目しているが化学反応性が無いので大気輸送のトレーサーとして活用されている。ラドンの地表面からの散逸量(exhalation)として30mBq/m2が見積もられている。大陸からラドンが発生し日本へ輸送され、大気輸送モデルにより、日本海側で特に北側山の斜面での子孫核種の沈着量が大きい。降雨中の子孫核種の放射能と降水強度には負の相関が見られ、傾向として計算結果との一致が見られるが、合わない事例も観測されていること等が紹介された。
我が国の自然放射線による被ばく線量が、経口摂取では世界平均の0.29mSvと比較して年間0.99mSvと高く評価されるようになった。これは日本人が海産物の摂取量が多いことから食品中のラドン子孫核種であるPb-210、Po-210からの被ばくが年間0.8mSvと評価されたことによる。大気輸送モデルによれば、東シベリアや中国でラドンが散逸、その場で蓄積しPb-210、Po-210が生成され、それが日本近海に供給され海産物を経由して経口摂取による被ばくに寄与している可能性が紹介された。会場からは日本海産と他の海域との海産物のPb-210、Po-210の違いなどについて活発な質問があり、測定結果の拡充や更なる研究が期待される。
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