「第52回 放射線環境・安全に関する研究会」印象記
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「大気中および水中の環境放射能測定 −福島原発事故に関連して−」という演題で愛知医科大学 化学教室 客員研究員 緒方 良至 氏による講演が
2024 年4月18日ナディアパーク デザインセンタービルの名古屋市市民活動推進センター集会室で行われた。
最初にRadioactivityの用語についてわが国では放射能と訳され、放射線を出す能力として説明されているが、中国語の放射活性の方がより正確であるとのことである。また、測定は既知の基準値との比較による比較測定が一般的であるが、4πβ-γ同時測定による絶対測定が良く知られており、高純度Ge検出器によるサムピーク補正を持いた絶対測定法が紹介された。
続いて福島第一発電所事故では2号機から多くの放射能が放出され、名古屋における雨水中の測定事例が紹介された。採取は、たらいを用い降雨量の少ない場合は雨どいから採取し、濃縮後高純度Ge検出器で測定された。4/15の測定では自然放射能の一つであるBe-7が最も高かった。また講演者の開発による活性炭で捕集しながら井戸型NaI(TL)検出器による空気中ヨウ素の連続測定も試みたが有意に検出されなかった。表層の土壌測定も行ったがCs-137は有意に検出されたがCs-134は検出されなかったことから、検出されたCs-137は過去の核実験によるものと考えられた。
最後に水中のSr迅速測定法について説明があり、従来の化学分析と比較して迅速かつ有害な危険物等を使用せず、Sr吸着材としてピュアセラムMAq(主成分はケイ酸バリウム)を用いた水中ストロンチウム測定法の開発について紹介された。吸着剤は大気中のCO2による劣化が認められるが、Srに対する高い吸着性能が確認され、吸引濾過後のろ紙上に捕集し、演者が開発したプラスチックシンチレータによるサンドイッチ状測定など多くの手法による測定比較が行われた。この手法により排水や海水、陸水におけるSr-90濃度で0.4Bq/Lの目標検出下限値を達成できた。他の迅速測定法と比較しても安価であり今後の普及が期待され、会場からは公定分析法に早急に取り入れてほしい旨の議論が活発に行われた。 |