「第53回 放射線環境・安全に関する研究会」印象記
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「加速器質量分析装置による放射性炭素年代測定」という演題で日本原子力研究開発機構東濃地科学センター 國分陽子主任研究員による講演が 2024
年 6 月 21 日、自然科学研究機構 核融合科学研究所のセミナー室で行われた。
自己紹介の後、最初に東農地科学センターの歴史の紹介があった。その後、センターで行われている研究開発に関する説明があった。地層処分を進めるうえで地質環境の過去の状態を知ることが、将来の姿をより正しく予測できる。過去の状態を知る方法として、年代測定に力を入れており、堆積物に対する放射性炭素年代測定法や基盤岩に対するウラン・トリウム・ヘリウム年代法など着目する年代や測定対象に合わせて色々測定手法があることが説明された。次に最もよく使っている放射性炭素(炭素
14) を用いた年代測定法について説明があり、対象試料をグラファイト化し加速器質量分析装置(ペレトロン年代測定装置)により放射性炭素 14 と安定炭素との比を測定することにより、炭素
14 の半減期 5370 年の 10 倍程度の過去の年代測定が可能とのことである。東農地科学センターの加速器質量分析装置は同性能の小型器の導入も進んでおり、ヨウ素
129 の測定にも可能とのことである。
このような年代測定の技術は考古学などの多くの分野で利用されており、実際に地元からの要請による測定も行われている。その事例として大湫手宿(大久手宿)の樹齢
1300 年と言われていた大杉が 2020 年 7 月 11 日夜の大雨により倒木し、その年代測定が名大などの研究者と共同で行われていることが紹介された。倒木した杉の根中心部による樹齢確認では、切り出した年輪をセルロース化して酸素同位体比年輪年代法、炭素
14 年代法による測定が行われた。炭素 14 年代法では、大気中の炭素 14 濃度は一定であると仮定されるが、実際はそうではなく、宇宙性の強度や地軸の変動、緯度などの地域によって変化しているため炭素
14 年代と暦年代との較正曲線が整備されているそうである。しかし、この較正曲線も万能ではない。より正確な暦年代を求めるため、本測定ではウィグルマッチングという手法が用いられ、年輪の複数の個所からのデータをもとに炭素
14 年代値と年輪数の情報から精度が高められた。
その結果炭素 14 年代法では樹齢 617 年という値が得られ、他の測定法と同程度であった。この地元の樹齢 1300 年という伝承を覆すこととなり、会場では結果発表に当たっての苦労話などが活発に議論された。
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