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「原子力研究開発機構東農地科学センター土岐地球年代学研究所見学会印象記」(報告)

 令和7年11月25日NPO活動の一環として会員7名の参加を得て原子力研究開発機構東農地科学センター土岐地球年代学研究所を見学した。
 まず、見学に先立ち会議室において、花室年代測定技術開発グループリーダーから地層処分研究の概要と、その中で研究所の業務について説明をうけ、その後、加速器質量分析装置などの施設を見学した。研究所には開発中の設備も含めて3基の年代測定用質量分析器があり、加速電圧が5MV静電方式のバンデグラフ型加速器(絶縁ベルトにペレット型チェーンを用いているため商品名がペレトロン)、300kVのコッククロフト・ウォルトン型(HV社製)、そして独自開発中の超小型装置である。
 5MeVの装置は加速電圧が大きいため管理区域に設置されているが停止中であったため区域内に入って見学することができた。装置は大型で大部屋にゆとりをもって設置され、炭素14だけでなくベリリウムやヨウ素など他の核種を用いた年代測定にも利用可能とのことである。続いて管理区域外に設置の加速電圧300kV小型の質量分析装置を見学したが、小型と言ってもかなり大きく電磁石が部屋いっぱいに置かれており性能は5MVと同じとのことであった。両者ともアルゴンガスを用いて加速管内で電荷を反転させるタンデム型の加速器である。最後の開発中の小型器はさすがに小さく、大きめのテーブルに乗る大きさであったが炭素14に特化した装置であるとのことで、加速粒子を結晶の隙間を通過させる際に電荷を反転させることにより小型化出来たとのことである。これらの装置は地層の年代測定でなく文化財など多方面からの外部利用も行われているとのこと。測定に使用する炭素試料はレボルバー式のマウントに多数装着され、1個が1mg程度で十分とのこと、また自然界の炭素による妨害が入らないよう前処理の重要性についても説明を受けた。
 見学後の質疑応答では、年代測定だけでなく放射性廃棄物処分に関する社会的な関心や、リニア新幹線工事における地下水問題など地層科学に関する議論も活発に行われ有意義な見学会を終えた。
 最後に本見学会の実施に当たり、快く見学申し込みに対応していただいた原子力機構関係者に感謝します。
(放射線・環境カウンシル理事:古田定昭)